関西医科大学第5回市民連続公開講座

演 題:食生活と癌 −あなたの食生活は大丈夫ですか−

講演者:高田 秀穗(関西医科大学附属香里病院外科部長)

主 催:関西医科大学附属香里病院

日 時:平成14年(2002年)1116日(土)

会 場:寝屋川市立市民会館小ホール

 

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    会(西嶋  攝子・関西医科大学附属香里病院皮膚科部長) 日本の死因の第1位は癌だと言われていますが、その癌と食生活について外科部長から講演をしていただきます。

 

 高 田(関西医科大学附属香里病院外科部長) 

 

 ( slide No. 1 ) 食生活の話をするのは内科の医者と決まっているのですが、外科医である私もなぜか食生活の話をしてしまいます。なぜそうなったのかというと、実は私は学生から医者になって研究室に入ったときに、大腸癌はなぜできるのかというテーマを選びました。大腸癌は食事と非常に関係があることがわかってきて、そのあたりから乳癌との関係など、癌と脂質について研究を続けてきました。

 きょうはこの会場を来たときに非常に嬉しいことが3つありました。一つはこういう講演会は人集めが難しいのですが、びっくりするほどたくさんの方がお集まりくださいました。もう一つは女性の方が多い。食生活の話を男性陣にしてもお家に帰って「油あかんらしいで」、「何であかんの」、「なんかわからんけども油はあかんらしい」という程度で全く話が進みません。現在の一般家庭では女性の方が食事を作ることが多いので、身近に接している女性の方が多いことは嬉しいことです。3つ目は香里病院で診ている患者さんやその家族の方がたくさん来られています。

 講演を始める前に皆様方にご質問いたしますので、挙手をお願いします。問1、魚と肉とどちらがお好きですか。お肉のほうがお好きな方は 1/5ぐらいですね。会場にいらっしゃる方の平均年齢がまあまあですので、その影響があるかもしれません。問2、バターとマーガリン、どちらをよく使っていますか。7割の方がマーガリンですね。きっとコレステロールを気にされているからだと思います。先程は内科部長が講演しましたが、内科の先生方から「コレステロールが高いからマーガリンにしなさい」とか「バターはコレステロールが高くなるからとんでもない」とお聞きになって使っていないのかもしれません。問3、肉に含まれる動物性油と植物性油とどちらが安全だと思いますか。植物性の油のほうが安全だと思われている方が9割以上ですね。動物の油はよくないと思っているようです。

 きょうは主に油の話です。嘘だと感じられることがいっぱいあると思いますが、ぜひとも覚えて帰っていただきたいと思います。

 

 ( slide No. 2 ) まず日本でどんな癌がふえて、どんな癌が減っているのかということをお話しします。

 

 ( slide No. 3 ) 19601997年の日本における癌死亡率の年次推移を示しています。男性の癌の死亡率はご存じのように日本では胃癌がずっとトップでしたが、胃癌はどんどん下がって、ついに肺癌がトップに上がりました。肝臓癌、大腸癌、前立腺癌がふえていますが、日本で一番ふえ方の著しい癌は前立腺癌です。この前立腺癌は非常にふしぎな癌で、50歳以上の男性の1530%で既に前立腺の中に癌細胞を持っています。それが何らかの理由で急に大きくなって癌の様相を呈するようになります。肝臓癌はこのようにふえていますが、肝臓癌の主な原因はC型肝炎だろうと考えられています。これが急性肝炎になって慢性化して肝硬変、肝癌となります。C型肝炎はもうふえないと見込まれているので肝臓癌は将来急激に減って、それに引き換え肺癌と大腸癌と前立腺癌はどんどんふえるだろうと予測されています。欧米社会における男性の癌の3大死因は肺癌と大腸癌と前立腺癌ですので、日本はそちらのほうに動いていることになります。

 

 ( slide No. 4 )  同様に女性の癌死亡率の変化をみると、女性でもやはり胃癌がトップでしたが減ってきました。2番目に大腸癌、3番目に肺癌、4番目に乳癌、そして肝臓癌の順になります。胃癌が減ったのと並行して子宮癌もこのように減ってきました。この理由はいろいろ言われていますが、お風呂にきちんと入る、シャワーをするなど、日本における衛生状態がよくなったことで子宮癌が減少したのだろうと考えられています。

 

 ( slide No. 5 )  どういう癌がふえていて、どうすれば予防することができるかいろいろ調べるために大阪府は癌登録事業を一生懸命やって癌の罹患率の統計を取っています。これによると、癌の罹患率でも胃癌が多かったのですが、どんどん減っています。それに比べて肺癌、肝臓癌、大腸癌、前立腺癌が死亡率とほとんど同じような形でふえています。

 

 ( slide No. 6 )  女性でもやはり胃癌が減り、乳癌がついに罹患率のトップになってしまいました。そういう意味では女性には乳癌検診をきちんと受診していただきたい。そして大腸癌が次にきます。癌の発生から女性では大腸癌と乳癌にこれから気をつけないといけないと言えます。子宮癌は減っています。

 

 ( slide No. 7 )  まとめると、多かった胃癌がどんどん減ってきています。大腸癌、乳癌、肺癌、前立腺癌が急にふえています。肝臓癌はふえていますが、減ってくるだろうと予測されます。子宮癌が減ってきました。

 

 ( slide No. 8 )  日本の癌の死亡者数を考えてみますと、この50年間に男性では 3.5倍、女性では 2.4倍に急増しています。1981年以降癌は死因の第1位となり、日本人の3人に1人が癌で死んでいます。そして欧米型の癌がふえて、欧米に近づいています。

 

 ( slide No. 9 )  これは癌死亡率の国際比較です。日本、アメリカ、イギリス、フランス、イタリア、ポルトガルのうち、胃癌の死亡率は日本だけ飛び抜けて高い。ですから日本には胃癌が多くなる要因があるだろうと思います。肺癌は日本では随分ふえてきましたが、それでもアメリカの6〜7割、イギリスの半分くらいです。まだまだ少ないもののふえる傾向にあります。

 大腸癌はびっくりすることに1994年時で比べてみるとアメリカの大腸癌の死亡率より日本の死亡率のほうが高くなっています。世界中で大腸癌の罹患率が一番高いのはハワイで生活している日本人男性になります。この点だけを考えればハワイに行かないほうがいいのかもしれませんが、大腸癌はこのようにふえてアメリカを抜いたということを理解していただきたい。幸い大阪府では女性の乳癌の罹患率は高いのですが、乳癌の死亡率を国別で比べると日本はアメリカの 1/3です。大腸癌と乳癌は一緒に動くと昔から考えられていましたが、大腸癌はアメリカを抜いたにもかかわらず乳癌はアメリカの 1/3です。そこには何か原因があるだろうと思います。子宮癌は同じような状態です。

 

 ( slide No. 10 )  胃癌の死亡率を横軸に、大腸癌の死亡率を縦軸にすると、胃癌の死亡率の高い国では大腸癌が少なく、胃癌の死亡率が低い国では大腸癌が多いという逆の関係が見えます。日本は胃癌が多く大腸癌が少なかったのですが、それが逆転しつつあります。

 

 ( slide No. 11 )  続いて乳癌の発生率と大腸癌の発生率では乳癌の多い国では大腸癌も多く、乳癌が少ない国では大腸癌も少ないという関係があります。もともと日本では大腸癌も乳癌も少なかったのですが、乳癌は少ないまま変化して大腸癌だけがふえています。日本人は乳癌を抑制するようなものを摂取しているからだろうと考えられます。

 

 ( slide No. 12 )  このような国際比較データを見ていると、まず人種が問題になります。日本人は胃癌になりやすく大腸癌になりにくい遺伝子を持っているのではないかとも考えられます。

 

 ( slide No. 13 )  日本からアメリカへたくさんの人が移民として移りました。その人たちの食生活と癌の関係について非常に多くの貴重な疫学調査がされています。アメリカに移住した移民一世ではすぐに胃癌が減って、その代わりに大腸癌がふえてきます。乳癌もふえます。二世はアメリカの人と同じになります。もう一つ大切な点は、日本の食生活と全く同じ食生活を続けている移民一世では日本の癌発生パターンと同じでした。どういうことでしょうか。アメリカに移住して現地の食事を食べるようになると癌のパターンが変わったと言えます。

 

 ( slide No. 14 )  これは、アメリカに移住した年代によって乳癌の発生がどのように変化したか、移住年齢の影響を示しています。黄色はもともとアメリカで生まれて育った女性、斜線が若いときにアメリカに移住した女性、レモン色は年がいってからアメリカに移住した日本人、白は宮城県に生まれて育った女性です。若いときに移住した人はアメリカ生まれの日本人と非常に似た形になっています。若いときからアメリカで生活すると乳癌が非常に多くなります。年いってからでもやはり少し影響があります。やはり食事性の因子が考えられます。

 

 ( slide No. 15 )  前立腺癌では先程言いましたように50歳以上の男性の1530%が癌細胞を持っています。乳癌の場合と同様にアメリカ生まれ、若いときにアメリカに移住した人、年いってからアメリカに移住した人、宮城県の人と分けたときに、高齢になってからアメリカに移って食事が変わるといっぺんに前立腺癌の発生率が高くなります。前立腺癌の場合は食事性の因子が高いだろうと考えられます。

 

 ( slide No. 16 )  養子縁組をしたときに養親とその養子の癌の発生の関係をみた非常におもしろいデータです。養親が癌で死亡した場合、養子の癌発生率はそうでない場合の5倍になります。親が子供を育てるときに親の食事と子供の食事はかなり似通っています。親が子供に食事を教えて、その人が独立して生活を始めますから、同じような食生活になります。親が癌で死ぬような食生活を子供にさせると、そうでない場合と比べて5倍もの差が出てきます。どんな形で子供を育てるかというのは非常に重要なことです。

 

 ( slide No. 17 )  もう一つおもしろいデータがあります。これは、英国における19281977年の食生活と乳癌による死亡率の関係を調査した1981年の論文です。その間に第二次世界大戦(19411945)が勃発しました。私は戦後の子供ですので、その頃のことはよくわかりませんが、そうすると食生活がアメリカやイギリスでも急に悪くなり、乳癌の死亡率もそれつれて低下してきました。戦後10年目になると食生活は戦前のレベルに戻ってきます。しかし乳癌の死亡率は低いままです。さらに15年後、つまり戦後25年経過するとやっと乳癌の死亡率が戦前のレベルに戻りました。これはどういうことでしょうか。つまり乳癌になるあるいは乳癌で死亡するには10年前、20年前からの食生活が関係していると読み取ることができます。ですから現在の皆さんの毎日の食生活が10年後、20年後のいろいろな病気の発生に関与していることになります。

 

 ( slide No. 18 )  癌の発生に関係する因子のうち80%が環境因子で、特に食事は3560%の関与率です。特に欧米型の大腸癌や乳癌や前立腺癌は食事が関与することが多い。

 

 ( slide No. 19 )  ではどのような環境でどんな食生活をして子供を育てるか。それによって次の世代の癌の発生に大きな変化が起きてきます。

 

 ( slide No. 20 )  大腸癌の発生に関与する因子として昔から随分多くのことが言われてきました。人種因子。これは統計をとるときにいつも出てきますが、特殊な遺伝性疾患を念頭においたもので、それ以外ではほとんどないと思っていただいていいと思います。そして環境汚染物質。最後に食事性因子があり、これが一番に大事になります。この食事性因子の中で総カロリーが非常に問題になります。その他に脂肪、タンパク、炭水化物、食物繊維、アルコール、ビタミン、ミネラルなどいろいろあります。ビールを飲むと大腸癌が多くなるとも言われますが、脂っこいものを食べながらビールを飲むとおいしいですね。ですから私はこのビールは油と関係したビールだと思っています。きょうはこの脂肪を中心にお話しします。

 

 ( slide No. 21 )  癌と脂肪。

 

 ( slide No. 22 )   皆さんも学校で習ったと思いますが、必須脂肪酸についておさらいをします。必須脂肪酸は生体の代謝、成長、修復に必須であって体内で合成されない脂肪酸ですから、食事から必ず摂らないといけません。これには2種類あります。一つはn−6系不飽和脂肪酸。代表的なリノール酸は1930年代から必須脂肪酸であることがわかっています。もう一つはn−3系多価不飽和脂肪酸。これにはα−リノレン酸、EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)があります。EPA、DHAというのはよく魚屋さんで見かけますので、お聞きになったことがあると思います。これは19701980年代に見つけられて、随分遅れてわかってきました。

 

 ( slide No. 23 )  n−6とかn−3という言葉は初めてだと思います。これは脂肪酸の構造式ですが、一番端に−COOHがあります。その反対側の端がω位置で、n−6はこのω位置から6番目の炭素に、n−3はこのω位置から3番目の炭素に二重結合があるという意味です。

 

 ( slide No. 24 )  それがどんなふうに関係しているかというと、リノール酸は聞いたことがあると思います。n−6系の最初はリノール酸ですが、代謝されてアラキドン酸になります。α−リノレン酸に代表されるn−3系は最後にはDHAとかEPAに代謝されます。

 

 ( slide No. 25 )  油がいっぱい出てきますのでちょっと整理しておきます。n−6系脂肪酸のγ−リノレン酸が多い油として月見草オイル。女性週刊誌で月見草オイルダイエットがはやりました。これはアメリカインディアンが使っているオイルとも言われています。もう一つはリノール酸。コーン油、ベニバナ油、大豆油、綿実油、ヒマワリ油に含まれていて、皆さんがサラダドレッシングにしたりフライにして毎日食べている油です。

 一方n−3系脂肪酸のα−リノレン酸が多い食品としてシソ油、エゴマ油があります。また葉菜や根菜にたくさん入っています。EPA、DHAは魚類にたくさん含まれている油です。

 

 ( slide No. 26 )  まず癌の発生と脂肪摂取量の話です。

 

 ( slide No. 27 )  しばらくネズミを使った動物実験の話になります。ネズミに大腸癌を作る実験で、餌を低脂肪食と普通食と高脂肪食の3つに分けます。未開の地と日本型食生活とアメリカ型食生活と考えれば理解しやすいと思います。その結果、癌の発生率はアメリカ型食生活で一番高く、ネズミ1匹あたりの大腸癌の数は高脂肪食のアメリカ型食生活で倍になります。脂肪の摂取量がふえると大腸癌がふえてくることがわかります。

 

 ( slide No. 28 )  同時に乳癌についても日本型食生活とアメリカ型食生活を比べると、乳癌発癌率も1匹あたりの乳癌の数もアメリカ型食生活で2倍になっています。もう一つ大事なことはこの乳癌の重量です。アメリカ型食生活では日本型食生活に比べて2倍以上癌が大きくなっています。つまり1回発生した癌はアメリカ型の食生活をしているとどんどん大きくなります。

 

 ( slide No. 29 )  世界各国での大腸癌による死亡率と油の摂取量との関係についてグラフにしています。横軸は10万人あたりの大腸癌による死亡率、縦軸は1日の脂肪摂取量です。1975年のデータですが、たくさん油を摂っている国では大腸癌による死亡率がものすごく高い。またその当時、日本では油をあまり摂取していなかったので大腸癌の死亡率も低かったのですが、どんどんふえています。欧米先進国は非常にたくさんの油を摂取して大腸癌による死亡率も高くなっています。ここにデンマークがあることを覚えておいてください。

 

 ( slide No. 30 )  癌と脂質の種類。

 

 ( slide No. 31 )  ネズミの餌をコーン油とラードを使って種類別に低脂肪食(日本型食生活)と高脂肪食(アメリカ型食生活)とにまず分けます。コーン油はリノール酸が多い油の代表です。ラードは飽和型脂肪酸を多く含む油の代表です。

 まずコーン油では日本型食生活からアメリカ型食生活に移ると大腸癌の発生率は2倍くらいになります。1匹あたりの大腸癌の数も2倍になります。同様にラードでも日本型食生活からアメリカ型食生活にすると大腸癌の発生率も癌の数もふえてきます。ところがアメリカ型食生活ではコーン油であってもラードであっても癌の発生率と1匹あたりの癌の数は同じです。つまり油の量が非常に多くなると、油の種類にかかわらず癌の発生に影響がないということです。日本型食生活ではコーン油を使うとラードよりも2倍以上癌ができて、また1匹に4倍以上の癌が発生することから、コーン油は非常に危険だということになります。

 

 ( slide No. 32 )  我々はリノール酸に注目して大腸癌を作る実験をずっとしてきました。今度は非常に純度の高いリノール酸と飽和型脂肪酸の一つであるステアリン酸の純度の高いものとを使って比べると、やはりリノール酸群で癌の数が多く、たくさんの大腸癌が発生してきます。ということでリノール酸はやはりよくないことがわかりました。

 

 ( slide No. 33 )   これは乳癌と油の種類の関係です。ココナツ油、牛脂、ヒマワリ油を使いました。ヒマワリ油はリノール酸がたくさん入っています。牛脂は飽和型脂肪、ココナツ油も飽和型脂肪になります。

 アメリカ型食生活(脂肪量20%)にすると、発癌率はヒマワリ油がやはり高く、1匹あたりの乳癌の数でもヒマワリ油が2倍以上になっています。乳癌の場合、油の量が多いアメリカ型食生活にしても油の種類の差が出てきます。一番下のヒマワリ油3%に注目すると、これは非常に少ない油の日本型食生活ですが、ヒマワリ油を3%に低くしてもココナツ油、牛脂のアメリカ型食生活の発癌率と同等です。また1匹あたりの乳癌数もこの2つと同じです。つまり乳癌の場合、リノール酸が少しでも入っているとかなり強い発癌増強作用があるということがわかります。

 

 ( slide No. 34 )  実は1971年という随分昔にキャロルというアメリカの学者がリノール酸の発癌増強作用について既に発表していました。ネズミに発癌物質を使って乳癌を作ります。コーン油、綿実油、ヒマワリ油、大豆油、ヤシ油、ラード、牛脂、オリーブ油、バターを使って比較検討しました。ものすごい実験量ですが、最終的にはリノール酸を多く含む油には乳癌の発生を促進する作用があることを見つけています。その論文の最後には「人の食生活でリノール酸をふやすことに注意が必要だ」と結論付けています。バターとマーガリンどちらがいいですかと初めに皆さんに尋ねました。コレステロールのためにマーガリンにしましょうという指導があり、この実験結果が未だに世の中に出ていないということを証明しています。

 

 ( slide No. 35 )  乳癌発症の危険因子(リスクファクター)を挙げました。乳癌の家族歴。自分の母親、兄弟が乳癌になった人は乳癌になりやすい。初潮が早い/閉経が遅い。性の早熟化は乳癌の危険因子になります。早く早熟する人はそうなる危険が高い。妊娠の問題と高齢になっての肥満は乳癌のリスクファクターになります。

 

 ( slide No. 36 )  おもしろい論文があります。

 

 ( slide No. 37 )  先程乳癌のリクスファクターに早く性が成熟することを言いました。母親のラットが妊娠したときにリノール酸をたくさん食べさせると生まれた子供の雌ラットの性成熟が変わるかどうか、さらにこの子供ラットに乳癌を発生させたときにどんな影響があるかということを研究しました。

 

 ( slide No. 38 )  実験系はリノール酸をたくさん含んでいるコーン油を使ってアメリカ型食生活(46カロリー%)と日本型食生活(12カロリー%)の2群にして、そして雄雌のつがいにして育てます。雌ラットにはつがいにする5日前らか出産までこの餌を与えます。生まれた子供ネズミを普通の餌で育てた乳母ラットに育てさせて、母乳の影響を防ぎました。そこで最初に生まれたラットの初潮がいつから起こるか日数を検討します。もう一つは21日齢、75日齢で乳腺の発達がどう変わるのか、影響があるのかないのかを検討します。乳癌は発癌剤を使って作ります。

 

 ( slide No. 39 )  母親ラットが妊娠中にリノール酸をたくさん食べるか食べていないかで比較しています。まず性成熟では、母親が妊娠中にリノール酸をたくさん食べていると早く初潮が始まります。皆さんのお子さんやお孫さんは早くから初潮を迎えていませんか。乳腺組織の発達をみるとどんどん発育しています。この頃の女性の乳房の発達は昔と全く違って大きく発達しています。といういことは妊娠中にリノール酸を多量に摂取すると生まれた娘の性成熟が早くなるということになります。

 

 ( slide No. 40 )  乳癌発生の影響は発癌剤を投与して乳房を毎日触ってしこりがあるかどうかでみています。ここでびっくりしたことに、高リノール酸摂取群の子供ラットではミルクの分泌が早く、発癌率も倍になっています。1匹あたりの乳癌数はあまりかわりませんでした。ということで子供の乳癌の発症に妊娠中の影響が認められます。

 

 ( slide No. 41 )  リノール酸を食べさせた場合、妊娠ラットに高エストロゲン血症を作って、生まれてきた子供ラットの初潮を早め、乳腺組織の発生/発達を早めるリスクファクターになります。一方、n−3系のα−リノレン酸には全くその作用がありませんでした。

 

 ( slide No. 42 )  

 コレステロールの話は専門家から見ると私は特殊なことを言っているだろうと思います。先程言いましたように家族性高コレステロール血症の方までがコレステロールを摂っても大丈夫となると生命にかかわる大変なことになります。その人たちは絶対に下げる必要があります。「コレステロール値が2も高くなった、どうしましょう」、この程度では神経質に悩まなくてもいいと思います。普通の生活をして、コレステロールが300mg/dlもなければ薬で下げたり食生活を改善して下げればいいと思います。

 もう一つ、栄養士さんたちも今までの教育のもとでいろいろな勉強してきましたが、コレステロールについて治療する大きなスタディをしたときに、栄養指導がある群で癌が高かったという何とも皮肉な結果が出ました。リノール酸はコレステロールを下げたり中性脂肪を下げたりする作用があるので、それをたくさん食べなさいという指導をずっとしてきました。その群で癌死が多くなったということも事実です。

 私たちは自分の専門の細かい重箱の隅ばかり見て大げさに言うし、内科の先生方はいろいろな患者さんを診てきて、コレステロールを下げるほうがいいだろうという結論になっています。別に仲が悪いわけではありません。私はやや極端なことを話をしていると理解されがちですが、本筋は離れていません。きょう参加された皆さんの90%は会の冒頭、植物油のほうが安全だろう、コレステロールを下げるからいいだろうと思っていました。その人たちがこの会の帰り道にデパートやスーパーマーケットに寄って油の包装の裏をちらっとみて、ああこれかと思うだけでも少しは変わってきます。それがいい方向に向けばさらによくなります。

 

 司 会  きょうはたくさんお集まりいただきありがとうございました。きょうの講演が皆様のよりよい健康のためにお役に立つことを期待しています。来年もよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。