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「がんの予防と治療」(前立腺癌)4
前立腺がん検診
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( slide No. 22 ) 今まで私たちは、病院に来られた患者さんで、しかも排尿に関する症状を訴えられた男性だけのPSAを測るという方法、つまり前立腺癌が何らかの形で疑われる方を保険診療 の範囲内で検査をしてきましたが、これでは最初に申し上げたように、症状のない方の前立腺癌は見つかりません。自覚症状のない方の前立腺癌を見つけて、必要な人には早く治療をしたいということで、守口市で市民検診を2年前の平成8年から始めました。日本全国では20年ぐらい前から、随分古くからやられているところもあります。ただ大阪府はなぜかあまり進んでないくて、守口市が最初です。守口医師会と市(行政)と私どもの教室、関西医大泌尿器科が協力して、平成8年から60歳以上の希望の方に始めました。

 癌検診というととんでもないえらい辛いことをさせられるのかと思われるかもしれませんけども、血液を測るだけです。一般の総合検診の一部ですから、貧血がないか、肝臓の機能とか、そのために採血しますが、その1ccをいただいてPSAの検査にまわすだけです。これは患者さんには全く苦痛はありません。そういう検診を始めました。

( slide No. 23 )  結果ですけれども、平成8年は 844人の守口市民の方が検診を受けられました。PSAが4ng/ml 以上で少し検査が必要だと思われた人は71人(8.4%)、日本中どこでも大体7〜8%ぐらいの方がひっかかります。実際に泌尿器科を受診されたのはこの中の51人で、白か黒かをはっきりさせるために最終的に組織を採る検査をされたのは36人です。その中で13人の方に癌が見つかりました。癌の発見率は 884人に対して 1.5%です。

( slide No. 24 )  実際に生検をされた方を年齢別に見ますと、60代でも見つかっていますし、70代前半でも。60歳以上の方が対象ですから、若い方もたくさん見つかっています。若い方は完全に治す手術ができますから、大変役に立っています。生検をした人の全体の3〜4割(守口市では36%)で癌が見つかっています。

( slide No. 25 )  その検診で発見された患者さんの前立腺癌のうち、転移がある進行した癌は15%と少ない。前立腺に限局した、骨にもリンパ節にも飛んでいない癌が大半を占めます。やはり検診をやることによって早期の癌を見つけることができます。実際に前立腺を全部摘出するような手術をして完全に治った方も、この中で13人いらっしゃいます。半分ぐらいの方が手術を受けて完全に治っています。

( slide No. 26 )  発見率は 1.5%と申し上げましたけれども、この数値が高いのか低いのか。守口市は市民の癌検診が大変熱心で昔からやってこられました。大腸癌、子宮癌、肺癌、胃癌、ずっと前からやってこられました。皆さんがよくご存じのこれらの癌検診での発見率は守口市では1000人当たり大体1人です。 0.1%、大体こんなところです。前立腺癌は1000人当たりにしますと15人(1.5%) 。ものすごい確率で癌が見つかります。

( slide No. 27 )   1.5%という非常に高い確率は守口が特別か、守口には前立腺癌が多いのか、水が悪いのではないかと思われるかもしれませんけども、全国で毎年大体2〜3万人の人が前立腺癌の検診を受けてられて、毎年決まって1.3 %の方に癌が見つかります。

( slide No. 28 )  私どもが行った前立腺癌検診の特徴は、第一に、一次検診は血液検査ですから、非常に楽なんですね。しかも医者が行きませんから経済的にも、実は他の癌検診と比べて安い。もちろん、二次検診では白か黒かはっきりさせるために生検をしますから、少し辛いですけども。第二に、1.5%と大変高い確率で癌が発見される。そして第3に、発見された癌の多くが早期癌で、治すことができます。前立腺癌検診にはこういう特徴があります。

 ですからこれだけ前立腺癌がふえている現在、もう少し多くの地域で行われてもいいのではないかと思います。

 今までの話をまとめますと、早期発見のためにはPSAを測る。毎年あるいは2年に1回でもいいと思います。できてから30年ぐらいになって初めてわかるぐらいのゆっくりした癌で、急速に進行する癌ではないので、2年に1回でも良いと思います。検診をしておられないところではホームドクターにご相談なさればよいと思います。特に身内に前立腺癌の既往のある方がいる場合には、少し注意をしていただきたいと思います。遺伝的なことも言われております。もちろん食生活とか家庭環境のこともあろうかと思います。排尿に関して異常があれば泌尿器科にお越しいただきたいと思います。泌尿器科に行ったらいつでも辛い目にあわさせるとは限りませんので、恐れずにお越しください。

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この講演記録は、市民ボランティアの方々が録音から起こした筆記録のディジタルファイルをもとに作成されたものです。
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